朝からずっと降り続ける雨
傘を差して来たはずなのに置いてた場所に見当たらない
どこに置いたっけ?
探しても見当たらないから諦めて帰ることにした
どうせ泳いで濡れてるし
制服が濡れなきゃいいや
着替えずジャージのままで下に下りた
階段を下りる最中
雨に濡れるのはいいけど風邪を引いたらどうしよう?
そんなことを思って少しだけ濡れて帰ることを躊躇する
昇降口の近くに傘がないかな?
濡れる地面に足を踏み出す前に確認してみたけど、こんな日に傘の忘れモノなんてあるわけがなかった
いいや、バス停まで走ろ~っと
小雨とは言いがたい雨の中を走るべく昇降口から外に出た
パシャパシャパシャ
水溜りなんて気にしないで走る
でもやぱりびしょぬれになるのは嫌だったから雨を避けられるところを選んで通っていた
向かってくる雨に顔を避けながら走っていると足元に転がっている何かに足を取られ
ぬかるんだ地面に足を踏ん張ることも出来ずに思いっきり転んだ
「痛っ......」
目には水の溜まった地面だけが映る
もういいや...
こけてどうでもよくなったから暫らくそのまま動かずにいた
ザーザーと耳に雨の落ちる音が響く
空に向けてる背中にはたくさんの雨が落ちてきていた
『このままいたら......地面と一緒になれるかなぁ』
そしたら
「泳いで家まで帰れるよねぇ...?」
思ったことがそのまま口に出て、そのあまりの馬鹿らしさにクスッと笑った
クスクスクスクスクス
笑いが止まらない
なんだか今の俺って惨めだよね...
帰らなきゃ帰らなきゃ帰らなきゃ
思うのに動けないからまたおかしなことを思った
「泳げるくらいの水たまりが出来ればいいのになぁ」
「何、不吉なこと言ってんだよ」
いきなり聞こえた声に驚いて身体をひっくり返す
するとそこには見慣れた不機嫌な顔があって
「じゅりえ~」
突然現れたキミに俺は出来る限りの笑みを顔に浮かべた
でもキミの顔は訝しげに歪んでいくばかり
そんな顔を見ていたくなくてそっと視線を逸らしたら
ピタ
柔らかくて温かなモノが俺の頬に触れてくる
そのまま優しく撫でてくるその手に頬を押し付けた
「何してんだよ…ったく」
何も言わず、頬にあるキミの手に自分のモノを添える
エヘヘへ
笑うとキミの小さなため息が聞こえてきて
その声に顔を上げるとそこには困ったようなキミの顔があった
「帰ンぞ…」
添えてた手を逆に取られて握られる
その手からじんわりと伝わってくる温かさに自然と頬が緩んだ
「ほら立てって」
引っ張ってくるキミの手の負担にならないように立ち上がる
ちゃんと立ち上がったのを確認したキミはこちらに背を向け歩き出した
「行くぞ」
立てば離されると思っていた手
でもそれは
キミの家に着くまでぎゅっと握られ
温かなぬくもりをずっと俺に与えてくれてた
キミが手を繋いでくれるなら雨に濡れるのもたまにはいいかも
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雨に打たれる
またもお題と不適合(泣)