もう6月も終り
そろそろ衣替えも完全に終わらせてしまわないといけない
そう思って服の入替をしていると、それはタンスの奥にひっそりと仕舞われていた
白いシャツ...
先輩のものかと思って平げて見るとそれはどう見ても大きすぎて
あぁ...俺のか
大学に入学したときと成人式に袖を通しただけで堅苦しいからと仕舞いこんでいたことを思い出した
まだ着れるのか?...これ
成人してからもまだ幾分か伸びている自分の身長にすこし心配になって腕を通してみる
少しだけ肩が窮屈な感じがするがそれほどでもないなと姿見を見ながら思った
............
普段は着ないシャツに腕を通すとなんだか気分がシャキッとするような感じがする
でもなんだか首元が寂しい気がして出したタンスはそのままにクローゼットへと移動した
クローゼットの引き出しの中にあるまだリボンが付いたままの箱を取り出す
リボンを解いて蓋を開けるとそこには落ち着いた赤のネクタイが入っていた
先輩が成人式の祝いでくれたもの
成人式につけて行く為にくれたらしいそれを使うのが勿体無くて箱に入れたまま仕舞いこんでいた
あのあとかなり長い間笑ってくれなくて大変だったな
ずっと膨れっ面だった先輩の顔を思い出して笑みが零れた
箱から取り出して自分の胸元に置いてみる
着慣れないものはどうにも似合わないように見えるが、そこまで変じゃないような気がする
着けなれないそれを記憶を辿って結んでみるとどうにか見れるくらいの形に落ち着いた
あ、結構似合うかも...
自画自賛しながら姿見を見ていると服装と頭が不釣合いな感じがして
高校時代からは想像出来ないほど短くなった髪をワックスで少しだけ立ててみた
さっきまでのTシャツにボサボサ頭だった自分とはまったく違う姿が鏡に映し出される
先輩が見たらなんて言うだろ...
少しはカッコいいとかって思ってくれるかな?
そんなことを思っていたらタイミングよく隣に置いていた携帯が鳴った
見なくても着信音でわかるたった一人の人
画面に映し出されるのはいつもと同じ『晩飯ってなに?』の文字
いつもなら『何が良いですか』とかその日のメニューを送るけど、今日はちょっと我儘を言いたくなった
『たまには外で食べませんか?』
先輩が外で食べるのが好きじゃないと知ってから初めて誘う外食
イヤだと返ってくればそれは仕方がないと諦め半分で送ったそれに少し時間を置いて返ってきたのは
『じゃあ7時に駅で』
という嬉しいものだった
先輩と外で食事が出来るというよりもこの服装で会うということにワクワクする
壁に掛かった時計を見ながら家を出るまでの間、俺はドキドキしながら放り出していたままの服を整理していた
*
駅で待ち合わせた先輩は俺を見てもいつもと同じで特に何も言ってはくれなかった
けど
耳まで真っ赤にして中々目を合わせてくれなかったから
少しはカッコイイって思ってくれたのかな...?
ねえ先輩、こんな俺もたまにはいいでしょ?
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白いワイシャツ
主>社会人1年生 高階>大学4回生で同棲してる設定で(汗)
ニセモノすぎてもうもう!!!