「だ~か~ら~何度も言ってるじゃんか!!」
「何度もって何度だよ!」
「何度もって言ったら何度もだよ!」
「そんなのちゃんと何回言ったか言えないのに何度もっていうな!!」
はぁ...
隣で言い合いを始めた二人を横目に手を止める
コイツラは大人しく作業するっていうことを知らないのか...
普段から元気で煩いタケルと普段は誰よりも大人しく静かなビス
まったく正反対の性格をしている二人が一緒に居ることすらおかしいのかもしれない
ただ、コイツラは二人して変人だっていう共通点を持っている
凡人の俺から見ればこの二人を会わせてみたら面白いかも...そう思って二人を引き合わせようと考えてたときもあった
俺がそういう世話を焼く前に偶然会うことになったんだが、コイツラはそれよりも前からお互いを知っていたらしい
気まずそうに挨拶をしたビスとどこまでも能天気に挨拶したタケル
あのときもこの二人は正反対の態度を取り、衝突することなんて無いと思ってた
「違うって言ってんじゃん!!」
「なにがだよ!ビスがここのネジを締めろって言ったンだろ!!」
............
それがどうだ。
ビーグルのことになるとビスもタケルも感情的になる
まあタケルはいつものことだが、ビスの豹変振りにはいつも驚かされる
ほんと、コイツラって変わってるよな...
順番がどうの、聞いてないだのと繰り返す二人の会話を聞きながら自然に出てくるため息を抑えることが出来ない
このままだと暫らく作業も始まらないだろう
高を括ってパソコンから離れた俺は水でも買いに行こうと作業台から降りた
「「カズマ!!」」
降りたとたんに後ろから大声で呼び止められて足を止める
声がしたほうに顔だけ向けると、そこには胸の前で腕を組んだタケルとビスの姿があった
こちらを睨みつけるように見てくる二人に『なんだ?』と問うとその口が合わせたように同時に動く
「なんで止めないんだ!!」
「なんで止めないんだよ!!」
語尾は違えど同じ言葉をまったく同じ調子で発した二人に思わず笑みが零れる
俺はそれを隠しもせず、顔に笑みを貼り付けたまま体ごと向き直った
「止めて欲しかったのかよ...」
「...カズマ以外に誰が止めるんだよ」
「タケルが自分で終わらせられるわけないじゃん!」
「なっ!ビスが先に言ってくんだろ!」
「タケルがちゃんとしないから言ってるんだろ!」
あ~あ~...また始まったよ
止めろとか言いながらまた始めてたら意味ねえだろ
ギャーギャー言い始めた二人に小さくため息を吐きながらその間に身体を進めた
間に立つと二人の視線が俺に集中する
俺は口角を上げ顔に笑みを貼り付けると両手を上げた
ペシッ
喧嘩両成敗とばかりに二人の額を叩く
それほど強くはなかったのにタケルとビスの身体が俺から離れていった
「「イッタァーーーー」」
大袈裟に額を押さえる二人のことを放ってパソコンの前に戻る
「休んでる暇なんてないんだろ」
キーを叩きながらそう言うと
視線の隅に二人の笑った顔が映った
言い合いをするのも止めてくれる人が居るって分かってるから...
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衝突
フリダムの3人です...が、不発
仲のイイ3人が書きたかったのに...